Hiro Ishizuka

Keywords:

トポロジカル絶縁体
軌道流
非線形応答
テラヘルツ光

トポロジカル絶縁体の非線形軌道応答

近年の理論研究で対称性に守られたトポロジカル物質の種類や分類,およびそれらを特徴づける不変量に関しては多くのことが数学的に明らかになっています.一方で,これらのトポロジカル不変量を反映した物理量や実験的測定方法については,量子ホール効果などの一部の例を除いて知られていません.本研究では,反転対称性のある2次元トポロジカル絶縁体に誘電分極を発生する非線形軌道応答の存在を理論的に予言し,さらにこの軌道応答の符号がZ2不変量の符号を反映することを発見しました.

  1. M. Davydova, M. Serbyn, H. Ishizuka. preprint (arXiv:2101.08277).

Keywords:

二層グラフェン
パーセル効果
電子格子冷却
電気抵抗

グラフェンのモアレ構造におけるパーセル効果

2枚のグラフェンを角度をずらして積層させたモアレ構造は,超伝導や磁性などグラフェン本来の物性とは大きく異なる性質を示すことが明らかとなり近年盛んに研究されています.これらの物質は伝導現象の面でもグラフェンとは異なる性質を示し,背後には超伝導などにも影響する相互作用効果と関連すると考えられていますが,その原因は良くわかっていません.我々は,最近の研究でモアレ・グラフェンに特徴的なワニア関数が電子格子相互作用を増強することを見出しました.これは,量子光学で知られているパーセル効果によく似た現象です.パーセル効果は量子光学で電子フォトン相互作用を制御する手法として幅広く用いられています.パーセル効果による相互作用の制御は,通常の物質では見られない,モアレ構造のような人口構造に特有の性質です.

  1. H. Ishizuka, A. Fahimniya, F. Guinea, L. Levitov. preprint (arXiv:2011.01701).

Keywords:

非線形応答
スピントロニクス
シフト流
テラヘルツ光

量子スピン系における光誘起スピン流

太陽電池をはじめとした光による電流の整流効果は基礎および応用の両面で盛んに研究されてきました.一方で,電流以外の流束の整流については,ほとんど研究されていません.本研究では,磁性絶縁体におけるスピン流の整流効果を理論的に発見しました.この機構は,反転対称性の破れた半導体で見られる異常光起電効果と類似のメカニズムです.この現象は,反転対称性の破れた1次元スピン鎖のスピノン励起[1]の他,フェリ磁性体のマグノン[2]でも観られます.また,通常のゼーマン結合以外にも,逆ジャロシンスキー・守谷効果や磁歪結合による電子と磁気励起の結合でもみられます.以上の成果は,異常光起電効果の物理の普遍性を示唆します.

  1. H. Ishizuka, M. Sato. Phys. Rev. Lett. 122, 197702 (2019).

  2. H. Ishizuka, M. Sato. Phys. Rev. B 100, 224411 (2019).

Keywords:

電気的カイラル磁気効果
非相反電流
磁気散乱
スピン・カイラリティ
らせん磁性

磁気散乱による非相反応答の基礎理論

非相反応答は,ダイオードの様に,電圧を右からかけたときと左からかけたときで電流の大きさが変わる現象です.代表例として半導体pn接合(半導体ダイオード)の他,ラシュバ電子系などの反転対称性の破れた結晶構造を持つ半導体物質で見られる電気的カイラル磁気効果があります.カイラル磁気効果は,磁場によるバンドの変形を起源とする為,フェルミ・エネルギーの小さな半導体を中心に研究されてきました.これに対して,磁気散乱を起源とする電気的カイラル磁気効果の機構を提案しました.この現象はバンド構造の変形を伴わない為,金属でも比較的大きな応答が期待できます.また,MnSi(東大 十倉・金澤研)やCrNb2S6(大阪市大 戸川研)でみられる非相反電流の温度・磁場依存性を良く説明できます.

  1. H. Ishizuka, N. Nagaosa. Nat. Commun. 11, 2986 (2020).

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異常ホール効果
スキュー散乱
スキルミオン
カイラル磁性体
スピン・ホール効果

磁気クラスタ―散乱による巨大異常ホール効果

金属磁性体で見られる異常ホール効果は,ベリー位相効果や量子位相干渉など,量子系に特有の性質を強く反映した現象であることから,量子系の研究において中心的な課題の一つです.強磁性体中の異常ホール効果はスピン軌道相互作用による非自明なバンド構造(ベリー位相効果/内因的機構)や不純物散乱の効果(外因的機構;スキュー散乱など)などが知られています.中でもフラストレート磁性体やスキルミオン物質で見られる磁気構造に由来するホール効果(トポロジカル・ホール効果;THE)が,近年精力的に研究されています.これに対して,磁気構造と関連したホール効果の機構として(内因的)THE以外に,局所的な磁気相関を起源とした多重散乱によるスキュー散乱がある可能性を指摘しました.このスキュー散乱機構は,内因的THE以外とは異なる符号を示したり[1],ホール伝導度が温度とともに上昇したり[2]と,内因的THEとは性質が異なります.また,従来の異常ホール効果に比べて大きなホール電流とホール角を示します[3].さらに,類似の効果はスピンホール効果も生じる可能性があります[3].これらの理論計算は,MnGe(東大 十倉・金澤研)やPdCoO2(京大 前野研)の実験を説明でき,今後のより詳細な研究が期待されます.

  1. H. Ishizuka, N. Nagaosa. Sci. Adv. 4, eaap9962 (2018).

  2. Y. Kato, H. Ishizuka. Phys. Rev. Appl. 12, 021001 (2019).

  3. H. Ishizuka, N. Nagaosa. arXiv:1906.06501 (2019).